何とか体調が持ち直したので群響の定期演奏会に行ってきた。
金曜日に膿を出し切ってくれたのが効を奏したよう。発熱や酷い痛みもなくなった。抗生剤と痛み止めのおかげか。
この時期、関東の方へ行くと鳴門親方、何を羽織っていけばよいかちょっと悩むことが多いのだけれど今週は高崎も寒いという予報なのでいつものアウターを羽織って出かけた。まずはローカル線で越後湯沢まで。そこから新幹線で高崎へというルート。
湯沢が近づくにつれ雪の量が増えて行く。南魚沼はまだまだ積雪が多く、家が雪に埋もれた状態。同じ県内でも随分違うなと思った。
松代や十日町では結構お客さんが乗り込んできた。外国の方も多くて、どうも大地の芸術祭を観に来た感じ。夏の開催期間以外でも冬期間のイベントやツアーを開催したり集客に余念がない。
昼頃に高崎に到着。演奏会の開演は午後4時。という事で高崎の一駅先の倉賀野という所へ。
ジャズ喫茶蔵人(くらーと)さんへ。
開店が午後1時という事でDMで伺うことを伝え、昼ごはん。倉賀野駅周辺にはほとんど飲食店がない。唯一見つけたソースカツ丼(SKD)が売りのお店へ。歯も悪いしお肉はちょっと敬遠したいが仕方ない。
SKDと言うとこれまで福井、福島で食べたことがある。群馬のSKDは酸味の利いたややあっさり目のソースが思いのほか御飯と合って美味かった。
1時15分ごろ蔵人に伺うと薄暗い店内には先客が一人。うーん、ザ・ジャズ喫茶!という事でカウンターへ。コーヒーを注文。
こちらのお店は店内撮影禁止。私語禁止とのこと。
なにぶんウィッチはジャズ喫茶初体験なのよね。意外?
マスターが次から次へとレコードをかけ、お客さんはそれを聴くという感じだが、マスターのレコードのチョイスがなんとも絶妙にグーな感じ。
最初はクリフォードブラウンのウィズ・ストリングスではなかったかと思う。そのあとはちょっとわからなかった。
店内の機器や本、雑誌はお好きに見てくださいとのことだが初めてなので自重。
鳴っていたシステムはプレーヤーがSP-10でアームはFR-64にDL103に見えたがどうか。
アンプはレヴィンソン、スピーカーはJBLの9500。
なかなかにガツンと濃ゆい音がする。お店の名前からも判るように蔵を改装した店内は非常に天井が高い。その所為か音が上へ良く伸びる。かなりの大音量だがそれほど煩いとは感じない。耳が慣れてくるとこの空間そのものがとても心地よく感じられて何だかうれしくなった。
演奏会の開場時間も近くなり、お暇した。また5月に演奏会がるのでその時お邪魔したい。
高崎駅に戻り、会場へ。
この日のプログラムは前半がワーグナーのトリスタンとイゾルデから前奏曲と愛の死。後半がマーラーの交響曲第9番という組み合わせ。
愛の死、独唱はソプラノの小林沙羅。指揮は常任指揮者の飯森範親。
どちらも実演では初めての曲。
前奏曲と愛の死を続けて演奏するのだから独唱者と指揮者が一緒にステージに入ってくるのかと思っていたが指揮者だけがステージに。演奏が始まる。
冒頭、やや緊張気味なのか少々音が硬いと感じたが次第に解れていき弦の厚い響きがホールを満たす。引き締まったテンポのなかで大きなうねりも見せていた。
すると終盤に、ステージ袖から小林が静かに入って来て、指揮者の横に。
もうステージ袖に現れたときのオーラがハンパない。圧倒された。愛の死に移ってからはもう小林の独壇場。聴衆の耳目をすべて搔っ攫う勢い。そうかプリマドンナとはそういうものなのだと納得。高音の張り・伸び少し足りない気もしたがどうだろう。
オケと混然一体となったクライマックスは圧巻の一言。大ブラボー。
後半はマーラー。
結論から先に言うと微妙。
オーケストラは大熱演。これは間違いがない。もちろんキズはあった。ナマだもの。これは仕方ない。ただこの熱演が何だか空回りというか消化不良というか飯森マエストロのマーラー第9番という音楽、世界を聴衆にも、オケにも十全に表す・示すというところまでには届いていなかった。
飯森マエストロの指揮は全体にテンポが速く、所々に仕掛けも施していたが、それに付けるのがやっと、という感じだった。
第2楽章、第3楽章もテンポが速く、細かいニュアンスのようなものを伝わってこない印象は残念。特に第2楽章は緩やかなレントラー風のテンポで、いくぶん歩くように、きわめて粗野に、というマーラーの指示からするとまるで全速力で駆け足、みたいであったし、第3楽章のロンド=ブルレスケも初っ端から早いテンポで進んでいき、最終盤の畳み掛けるようなところでテンポが上がらず弛緩してしまったように聴こえてしまって残念。
ただ第4楽章はもう。もう何もいう事が無いくらい素晴らしい演奏だった。あんなアダージョが聴けるとは!もうずっと鳥肌がたちっぱなし。
飯森マエストロの振幅の大きなうねりに見事に応えた演奏。特に終盤、段々音数が減っていく掛け合いの美しさと儚さ。固唾をのんで見守ったよ。さすが群響!やるじゃない!
ただ、前半の3つの楽章のやや上滑り的な演奏があってのことなのかもと思わないでもない。
そんな中でも特にホルン、ヴィオラ主席、コントラバスはしっかり仕事を果たしたなと。
裏を返せば、ホルンがコケていたら目も当てられなかったかもしれない。
そんなわけで大満足、とは行かなかったが収穫はあった演奏会だった、かな。
飯森マエストロが演奏後どう感じているかはわからないが、また数年後、10年後くらいにこの組み合わせで是非聴いてみたいものだわよ。
夜はおでんで一杯。まあ歯のこともあるので控えめに頂いて。
次、高崎に来るのは5月17日かな。高関マエストロでショスタコの8番。これは期待大!