2016年1月7日木曜日

ブーレーズ没す

20世紀を代表する作曲家、ピエール・ブーレーズが亡くなった。
いつものように職場の喫煙所で食後の一服がてらスマホを観ていたらいきなりの訃報。思わず呻いてしまった。
そのショックはアバドやマゼールのときを上回るかもしれない。
昨年はロバート・クラフトも亡くなったし、これでストラヴィンスキーやウェーベルンといった20世紀音楽の演奏を牽引してきた指揮者がいずれも物故したことになる。
作曲家としてのブーレーズの音楽は理解の範疇を外れているしトンとわからないけれど、指揮者ブーレーズには随分とお世話になった。
何と言ってもCBS盤のストラヴィンスキーの3大バレエ。とくにハルサイの洗練、明晰精緻な演奏に驚いた。さらに驚いたのはDG盤。これは前の録音を上回る精緻さ。音楽の重心がぐっと下がって洗練度を増し、超クールだった。録音の違いもあるだろうがCBSの旧盤が結構どぎつく、乱暴に聴こえてしまうほど。

DGにレパートリーを再録音するようになってよく言われたのが、以前に比べてブーレーズはつまらなくなった、温くなったというもの。円熟じゃだめですか?
CBS時代の録音をたくさん聴いているわけではないので断言はできないけれど、明らかに晩年は音楽の見通しが良くなり、無理な音作りをせず音楽の自然な流れを重視するようになったと思う。再録音したベルリオーズの幻想ではアンセルメも顔負けの音の振幅と楽器間のバランスでこの曲を聴かせた。面白さでは旧盤だが、新盤には凄みを感じたものだ。
また晩年の録音で感心するのは楽曲によるオケの使い分けが絶妙なこと。レコード会社の、というよりはブーレーズの意向がほぼ通ったのではないかと推察する。DG盤のブーレーズは、なんだか味のある演奏をしていると思うのだがオケのチョイス、オケの個性、特質が強く関係しているのではないかと考えている。同じストラヴィンスキーでもハルサイとペトルーシュカはCLE、火の鳥はCHIと同じ作曲家でもオケを変えているし、マーラー全集でのCLEとの4番、7番などは曲とオケの特質が見事にマッチした演奏だと思う。
7番について個人的にはクレンペラーと似ているように思っている。もちろんテンポは対極だが、7番の楽曲構造を明らかにしようと試みた点においては共通しているのではないかと思う。
持っているブーレーズのCDのなかで一番のお気に入りはストラヴィンスキーの詩篇と三楽章の交響曲のカップリング。BPOの音が楽曲にマッチしてこれも超クールな演奏となっている。ジャケも音楽に合っていて秀逸。


今日はCBS盤のハルサイとDG盤のペトルーシュカを聴いて冥福を祈ろうと思う。
みなさんのブーレーズとの思い出はなんですか?

SICC 1083

POCG-1611

DG 457 616-2

2 件のコメント:

  1. 思い出といえば、やっぱり例の「爆破予告」ですかね。テロリストか?
    てある意味テロリストだったんですけどね。
    個人的にはショスタコをやってから天国行きの切符をゲットして欲しかったなあ。

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  2. うな君
    寒いね!
    そうね、数々の過激発言。自分は「シェーンベルクは死んだ」かな。「お前はも死んでいる」とならぶ死亡告知ですね。
    でもその数々の過激な発言の真意はどうなんだろう?

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